1990年代なかば、東京農業大学准教授:上原厳の研究が森林療法の概念を作りました。
彼は養護学校の生徒との交流の中で、生徒が野外活動になると元気になることや、畑を耕したり苗を植えたりするよりも里山やクリ園で遊ぶ方が顕著に元気になることに気が付きました。そこで木のある環境が良い影響を与えているのではないかと思いつき、調べ始めました。
その中で注目したのが神山恵三氏の「森の不思議」でした。この本では、ドイツの森林保養地バート・ウェーリスホーフェンが紹介されていました。早速、現地に赴き、森林保養はクナイプ療法(自然療法の一種)の一環として行われていて、運動療法(楽しみながら続ける運動)のメニューに一日二時間の森林散策があることなどを知りました。
帰国した彼は、知的障害者施設、自閉症施設での森林療養を試みました。しばらくすると、指導者への呼びかけに応えはじめ、返事をするようになり、作業もすこしずつできるようになったり、パニックや自傷・他傷行為もなくなったそうです。その成果を1999年日本林学会で「森林療法の構築に向けて」として発表し、森林療法研究会を主宰(現NPO日本森林療法協会)して森林療法の研究を進めました。
今では森林療法とは、森林が人に与える健康増進、病気予防、リハビリテーション、リラクゼーション、療育、保育、教育など、森が人に与える影響を利用した活動全般のことをさします。