運動や仕事などの作業を続けると疲れますね。運動や仕事で細胞が酸素を消費する際、活性酸素が発生して細胞が傷つけられた状態になり、疲労物質(特定のタンパク質)が発生して体内で増加します。そして疲労物質が増えている情報が脳に伝えられて「疲れた」と自覚し、休息を促す。しかし、仕事の都合や人間関係などで休みたくても休めずにいると交感神経優位の状態が続き、血圧、心拍、血糖などを上昇させ、副交感神経による休息・修復が追い付かなくなり、自律神経のバランスが乱れ、思考力、注意力、意欲の低下、頭痛、肩こり、腰痛など、様々な症状を引き起こします。さらに進んで自律神経失調症になると免疫機能も低下します。これがストレス状態により現代人の抱える疲労と症状です。
こうした疲労の回復に、五感の刺激により快適と感じることが有効ではないか、ということが経験的に知られていました。自然環境にいるとストレス状態が軽減され、元気になり、リフレッシュします。自然環境が神経系を調整し、活気とリラックスの健全なバランスを保つのです。 森林浴は、自然環境に身を置くことでストレス状態を軽減する方法の一つです。
ストレス軽減で大事なのは、「快適」と感じるかどうかです。森林医学の宮崎良文さんによると、快適性とは「人と環境のリズムの同調。波長が合う、雰囲気がいい」ことだそうです。人の生理機能は対自然環境用に作られているため、都市環境の中で自然環境要素に触れたとき、本来の人の姿に近づき、それが快適に感じられるというのです。また、快適で脳活動が鎮静的な状態を作り出すことでストレスを軽減することが分かってきました。
ただ、同じ景色を見ても、その景色が好きな人は快適と思いますし、特に何も感じない人は快適と思わないのでストレス軽減にも効果はありません。何が「快適」なのかは個人差がありますので、いろいろな体験から見つけていくことになります。
森林浴の効果としては以下のようなものがあります。
視覚:森林歩行時の風景を見たときの効果
聴覚:小川のせせらぎや鳥の鳴き声、葉のざわめきなど
森林由来の音による効果
嗅覚:フィトンチッドの吸引による効果
触覚:歩行、木に触る、草の上に座る・寝転ぶ、風や日光を浴びる、
等による効果
味覚:山や地域の食材を使った郷土料理などをおいしいと感じる効果
森林での作業:身体を動かし汗をかくことによる爽快感などの効果
➡五感に適切な刺激を与えることが療法になっています。